水式トイレについて

インドやらパキスタンやらタイやらでは、紙ではなく水でおしり周辺を洗う尻水洗い式トイレが主流なのですね。留学中は私も左手を不浄の手に位置付け、個室に入るやいなや備え付けのポットに水を汲み、肩にかけていたショールをぶさいくに胸のまえで結び、(下にひきずるとこまる)しなやかな手つきで左手を少しくぼませそこに先ほどのポットから水を注ぎ、きれいきれいにしておりました。
日本人の中には、手で直接触るなんて!!と尻水洗い洗浄を断固拒否し、南アジアを旅行する際かばんに「芯を抜いてぺたんこにしたトイレットロール」を常備する人も多いかとおもいますが、水洗浄を日常としている南アジアの人々にとって私たちの常識である紙尻拭き洗浄はいったいどのように認識されているのでしょうか。
ここで興味深い一文を紹介します。
「中は、当然のことながら私のもっとも苦手とする西洋式だった。私の知り合いで、便座に直接尻を下ろしたものはいない。非常に不潔な感じがするので、誰もが便座の上に靴のままあがる。デリーでも気のきいたホテルなら、西洋式の便器の上部横に張り出しの踏み台がついているのだが。(略)ほかにも難題があった。尻洗い用の水がなく、トイレット・ペーパーを使わねばならなかったことである。この方法では、尻は完全に清浄にならないという大問題があったが、やむをえない。「ローマではローマ人のようにせよ」という英語のことわざが私の脳裏に浮かんだ。」(喪失の国、日本 MKシャルマ 文春文庫 2004年)
ふむ。紙尻拭き洗浄もさることながら、西洋式トイレもかなりの難題とみえます。日本でも西洋式を断固拒否する比較的年上の方々がいますね。確かに誰が尻をつけたのかわからない便座を使うのは、不潔のきわみであるのかもしれません。
何が浄で何が不浄なのか。ひとそれぞれですが、水洗浄に慣れて帰ってきた当初、紙洗浄に「不十分さ」を感じたのは否定できません。