ねぎの子

つい最近、田んぼに水を張るためにたまねぎを全部掘ってしまったので、納屋の軒先には大量の新たまねぎがぶらんぶらんぶら下がっている。恋人と、彼の周りに住んでいる人たちにおすそ分けしようと思って、大量に袋に詰めて学校へ。
外は小雨。なんだか湿気がくぐもった電車の中、近鉄バスの中、私の持ってきたたまねぎによってたまねぎ臭で充満。ごめんなさいごめんなさい、もしこの中にたまねぎを死ぬほど嫌いな人がいたらと思うといたたまれず。それで思い出した記憶。
高校に入ったばかりのころ、私は自己紹介で、「えっと、実家は農業をやってます。趣味は農業です。なんか作物がほしい人は言ってください。」と言ったところ夜知らない男の子から電話がかかってきて、「なんか作物ちょうだい。」と。「今はねぎしかない。」と答えたら、「ねぎでいいよ。」
次の日、リュックサックからねぎの先っちょをはみ出させて登校した私。それが周りには相当奇妙にうつったみたいで、卒業するまで密かに「あのねぎの子」と呼ばれていたらしい。
あーあそれで私あんなにもてなかったのかしら、などと今となって思う。